Maiko
松野 秀昭
Maikoについて
Maikoさんは抽象的な作品を作られていますね。絵の具のテクスチャーが表れているのが印象的でした。
Maiko 目に見えないことを表現することに魅力を感じていて、形あるものを描きたいというよりは、想像したものを表現しているんです。その中の一つで、バックや帽子に私のイメージするものをデザインして、お客様に見てもらうということをやっています。
そのイメージするものは、テーマ性とか元になるものがあるんですか?
Maiko その時の感情ですかね。9月にやらせていただいた個展では、”蘇り”をテーマにしていたんですけれど、作品はその時の感情がそのまま絵に出ているという感じで...。例えば、ココナッツオイルをコーヒーに入れて、その浮かんでいるのを見て綺麗だなと感じた時に、それを絵で表現したいなと思うこととか。
日常的に感じとったことをそのまま記録しているという感じですね。
Maiko そうそう!でも、それを表現することは結構苦痛というか...。実際、表現することは楽しいんですけれど、目に見えないものとか自分の思ったことを作品にするのは難しくて。ただ、何かを追求し続けたいというところがあって、難しいものを表現することがやめられないんです(笑)
色や筆跡をフィーリングで描かれていると思うんですけれど、描いている最中になんか違うなと思うことはあるんですか?
Maiko もちろん、そう思うことはありますし、描いている途中で最初に思い描いていたイメージと変わってくることもあります。
Maikoさんの作品はさまざまな素材が使われていて、物質感が作品に表れているなと感じました。
Maiko そうなんですよ〜。直近の作品だと、今よく目にするアクリル板をひたすら割って貼り付けたりしていたんです。そういう日常的にあるものを違うやり方で表現することで綺麗に見えたり、それでいろんな風に想像してもらえたら楽しいなっていうのもあって、さまざまな素材を使いますね。そこにあるものが急に見違えて見えたら面白いな、みたいな。
絵画だけではなくて、身につけられる作品もありますね。
Maiko 絵に興味ない人にも関わってもらえたり、アートって面白いんだな、と感じてもらえたらいいなと思っています。今回のイベントでも、色々見て楽しんでもらえたら嬉しいです。
松野秀昭について
松野さんは写実的な動物画や風景画を制作されていますね。描くときのこだわりってありますか?
松野 全体のバランスがくずれないように、アウトラインを気を付けながら描いています。
哺乳類から爬虫類、鳥類まで、さまざまな動物をこれだけ写実的に描かれていますが、どういったことから着想を得ているんでしょうか?
松野 人が生きていく上で経験する出来事等をモチーフにして動物画を描いています。
人の営みと動物の営みが重なっているようなイメージなんですね。描かれている動物が生き生きとしていて、動いている瞬間のような動物を描けるのはかっこいいなと思います!あの動物で表現しよう!と決めるときに、どういったプロセスがあるのでしょうか?
松野 バランスや調和の取れた動物の構図に、自分が伝えたい事を合わせます。それらが合えば作品にしていきます。
ほとんどの作品が鉛筆で描かれていますが、制作時間はどれくらいかかるのでしょうか?
松野 大きさにもよりますが、細かく描いてしまうので時間がかかってしまいます。
続けられる集中力というのも一つの武器だと思うので、すごく良いと思います!松野さんは2019年から絵の活動をされていますね。絵を描き始めたきっかけは何ですか?
松野 それまで絵を描いた事がなくて、人に見せた事も描きたいと言った事もなかったのですが、友人に勧められてやってみたら楽しかったのがきっかけです。
そうなんですね!昔からずっと描いてきたかのように写実的に描かれるのですごいなと思います...!
Maiko × 松野 秀昭
Maiko 松野さんの作品を拝見させていただいて、細かく描かれるのが素敵だなと思いました。
松野 ありがとうございます!僕はMaikoさんのあのザクザクしたタッチが憧れますね。
Maiko 私は、松野さんと同じようにずっと前から絵を描いていたわけではなくて、描くのは好きだったんですけれど、本格的に描き始めたのは二、三年前からなんですよ。松野さんの話を聞いていて、感覚的なところは近い部分もあるのかなと思いました。
人々の営みや生活も目に見えないものが多いですよね。
Maiko 表現方法は違いますが、思うところは似通っている気がします。出来上がるものは違うけれど、感覚的には近いものがある気がするんです。
松野 抽象画は自分の内側のつかみどころのない世界を表現されているように思うのですが、道に迷ったりする事はありますか?
Maiko 常に迷っているんですけれど、模索しながらそれも含めて表現しているという感じです。描いているものを人生そのものと思っていて、描いているときに、楽しいというよりも苦痛だなと感じるのは、思っているものを思っているように表現したいけれど、なかなかできないということがあるからだと思います。もがいて、迷った結果出来上がるみたいなこともあったり(笑)描いている時の感情が絵に出るのはそういうことがあるからだと思います。
松野 絵のタッチを見ると怒りの感情にも見えますが、どういう心境で描かれている事が多いですか?
Maiko 結構穏やかにやっていますね(笑)絵の具ひとつを筆で描くのも素敵なんですけれど、自然と落ちた雫も素敵だなと思っていて、だから絵の具が飛び散るのも一つの表現で、その自然な姿も素敵だなと思っているんです。
松野 すごく感覚的ですね!
Maiko 何となくイメージしながらやるんですけれど、松野さんがそう受け止めてくださるのも嫌というわけではなくて、それも一つの考えなんだなと思います。自分の中でイメージはあるんですけれど、捉え方は十人十色で捉えてもらえたらいいなっていう感じです。
松野 一つの作品にかける時間はどれくらいですか?
Maiko さまざまですね。大きいパネルで一ヶ月かかる時もあれば、一週間もかからずに出来上がってしまったりとか。それも表現の仕方とか、私の感情の持っていき方によって変わってくると思います。完成があって完成じゃない、とりあえず納得したけれど納得し切れていないみたいな、ずっと未完成な感じなんです。
松野 終わりがわからなくなるんですね。
Maiko そうなんですよ。完成かなって思った絵を何日後かにもう一回見たら、やっぱりこれ足したいな、とか思うんです。サグラダファミリアみたいに永遠に終わらないみたいな感じで(笑)やっぱり私の感情の持っていき方によるんですよね。
松野 内なる自分との会話ですね。空間作りが大変そうです。
Maiko 松野さんはそのあたりはどうなんですか?時間をかけようと思えばとことん描ける、という感じなんですかね。
松野 時間をかけて描くことは出来ますけれど、早く描けるようになりたいという思いがあります。雑にはなりますが、これも一つの表現と受け止めて広い目で見てみようと思っています。
Maiko チャコペンを使って描いてらっしゃるんですよね。ぼかしたりとかはどのようにされているんですか?
松野 擦筆や練り消しを使用してぼかしの表現をしています。
本格的な木炭デッサンという感じがしますね!松野さんは人の活動からインスピレーションを得ているとのことですが、人間観察とか、ニュースで見る人の動きを参考されたりしますか?
松野 今までは遠い位置から人を眺めていただけなので、今回のイベントで色々な人と関わって色々な世界を知って、作品の幅を広げる事が出来ればいいなと思っています。
ぜひ、このイベントで殻を破って欲しいです!
松野 MaikoさんのInstagramを拝見させていただいて、百貨店や飲食店などで作品を展示されていますが、どのようにお仕事を取られているのですか?
Maiko 元々私は帽子屋さんなんです。色々なご縁で、ジュート素材のバッグをやっている方を紹介してもらったりとか、私がリメイクしたものを紹介して話が広がったりとか、縁つながりでそういったお仕事ををやらせていただいています。色々制作して、知り合いのお店に置いてもらったりとか、偶然の繋がりやご縁のおかげでできているんです。
松野 そうなんですね!とても大事なことだと思います。僕もこのイベントに参加することが何かのきっかけになるといいなと思っています。
Maiko こうして皆さんとお話しすることも何かの縁だと思いますし、何かしら人目に触れたほうがいいんだなとはすごく実感しています。アドバイスをいただいたり、色々広がるお話しが結構あって、私もどんどん参加してこうという感じです。私は目に見えないものとか感覚的なものを表現しているんですけれど、みんなが繋がって楽しんでもらえるのが一番嬉しいんです。
ぜひ今回のイベントでも思い切って楽しんで欲しいなと思います!
松野 Maikoさんはいくつかの作品を同時進行で作られますか?
Maiko 同時進行でできないんです。同時に描いてみたことがあったんですけれど、うまくいかないんですよ。一つのものに集中したらそれしか描けないみたいで...。
松野 僕は一つの制作に時間をかけてしまうので同時進行でやる場合があります。でも、Maikoさんがおっしゃるように一つの作品に気持ちが偏ると、他の作品への気持ちが疎かになるので、取りかかる際にはより負荷がかかる気がします。
Maiko そうなんですよ〜。感情を表現していることもあって、二つ同時に描くと気持ちが分散してしまう感じがするんです。絵の依頼も、依頼してくれた方をイメージして描く時があるので、その人をイメージしながらとなると余計にその作品に集中しないといけないんです。
その人の印象を忘れてしまうと、筆が止まっちゃいますよね。
Maiko そういう依頼が多いこともあって、目に見えないものを描いていることが多いので、見えないものが見えているようなイメージが定着しているような気がするんです。なんとなく初めて出会った人の色とかイメージがわかるというか。
松野 周りの方からアドバイスをいただいて、それを活かす事はありますか?それとも自分の内側だけで表現されますか?
Maiko アドバイスは受け入れますね。客観的に見てアドバイスをいただけるのはありがたいですし、自分の中だけで考えているよりも、アドバイスを受け入れてそれが面白い発想に繋がったらいいなと思っています。
松野 作品に周りの方との繋がりが含まれて表現されているのは温かみがあって良いですね!
松野さんは周りの人と一緒に、というよりかは、一人で描いてるほうが多いんでしょうか?
松野 以前は自分の内側に籠もる事が多かったのですが、最近は自分の周りにいてくれている人と接する機会が増えて、その人達の事を思いながら描くようになりました。それが自分の作品に表現されてきていると思うようになったんです。
描いた絵のモチーフとなった方に作品を見せたりされますか?
松野 もちろん!作品を見せた時にすごい喜んでもらえて、その方と繋がったと感じる事が出来て嬉しかったです。
そろそろお時間なので終了させていただきます。面白い話をたくさん聞くことができたのでとても楽しかったです!お二人とも今日はありがとうございました!
一同 ありがとうございました!
- 聞き手
- 小寺 ことみ(BORDER!2021 イベントディレクター)
- 編集
- 大城 咲和(SHAKE ART!ライター)